平昌五輪SOS チケットを買うのは日本人だけ

平昌五輪SOS――チケット売れず、ホテル埋まらずの実態

1/16(火) 7:00配信   文春オンライン

「焦りを通り越してもはやパニックです」。来年2月に迫った平昌五輪をめぐる文在寅政権のドタバタ劇を、ある韓国人ジャーナリストはそう評した。北朝鮮情勢が不透明な中、世界からは参加を躊躇する声があがり始めた。大統領が笛吹けど踊る者なき開催国の惨状。

【写真】閑散とした平昌市内の食堂

◆ ◆ ◆

 状況を考えれば、それは異様な一言だった。

「平昌五輪に来てくださいね」

 韓国の文在寅大統領が安倍晋三首相に、電話でそう“懇願”したのは、11月29日。この日、北朝鮮が日本の排他的経済水域内に弾道ミサイルを発射したことを受けての緊急電話会談でのことである。

 国際社会が北朝鮮への制裁圧力を強める中、韓国は北朝鮮への人道支援を続けているが、この会談中、文大統領が、そのことに触れることはなかった。

 安倍首相は、思わず周囲にこう漏らしたという。

慰安婦合意とか、国家間の約束も守らないのに。厚かましいよね」

 12月19日には、韓国の康京和外相が来日。河野太郎外相と会談した際にも「安倍首相を平昌で歓迎したい」という文大統領のメッセージが伝えられ、河野外相が「(慰安婦合意を履行しない)今のままでは、それは難しい」と突っぱねる一幕もあった。

 韓国人記者が嘆息する。

「今、文在寅大統領の頭の中は、とにかく平昌五輪一色。ただでさえ、平昌は韓国人も知らないマイナーな都市なうえに、ドーピング問題でロシア選手団の参加が認められていない。北朝鮮情勢は依然不透明で、ヨーロッパ各国に参加を躊躇する国も出始めた。このままでは大失敗に終わって、国際社会に恥をさらすことになりかねないからです」

 北朝鮮が平昌五輪に参加すれば、大会期間中のミサイル発射やテロなどの危険性は減ると見られるが、現時点では参加の可能性は限りなく低いという。

「フィギュアの選手が2人予選を通過しただけで、メダル獲得の可能性もほとんどない。韓国は主催国としてメダルを多数獲得するでしょうから、出場をすると南北格差が浮き彫りになり、却って国際社会に格好がつかなくなります。

 ただ、北朝鮮は直前まで不参加を明確にはしないでしょう。五輪参加を“人質”にして、文大統領に圧力をかけたいのです」(『コリア・レポート』編集長・辺真一氏)

 その文大統領は12月19日、米テレビのインタビューで、大会期間中の韓米軍事演習延期を提案した。

「それも米国側への根回しもないまま、発表した。北朝鮮の作戦にまんまとハマった格好で、これには国内からも、批判の声があがった」(前出・韓国人記者)

 22日付の中央日報は文大統領の演習延期の発表に対して、こう批判した。

〈私たちが掲げる「平和オリンピック」が朝鮮半島の安保体制をゆさぶり、北朝鮮の核開発完了に必要な時間を与えるようなイベントになるのではないかという懸念が出てくる。文政権は、北朝鮮の時間を稼いであげる政府になるのか〉

さらに冬季五輪随一の人気競技・アイスホッケーでも問題が生じている。

「北米のNHLはリーグ戦の日程と重なるとして、すでに不参加を表明。ロシアを中心としたKHLは、IOCによるロシア選手団出場禁止処分に反発し、不参加を検討しています。二大リーグ不参加となれば、チケットがさばけなくなる可能性もある」(オリンピック情報専門サイト『ATR』編集長・エド・フーラ氏)

 米NBCスポーツには〈平昌五輪のアイスホッケーは、ジュニア世界選手権のように感じられるだろう〉と報じられる始末だが、実は韓国には“奇策”がある。

「何と海外の優秀な選手を“新韓国人”として特別に帰化させたのです。男子アイスホッケーチーム25人中、7人が米国やロシア、カナダの出身。バイアスロンなど他の競技にも、“新韓国人”がいます。マスコミは『国際化』と美化していますが、『そこまでしてメダルを取りたいか』と反発する国民も多い」(前出・韓国人記者)

 だが、チケット転売サイトを見てみると、アイスホッケーのチケットは、原価のままでも買い手がついていない状態だ。

「アイスホッケーでこの状態ですから、他は言わずもがな。とにかくチケットが売れていない。直近の韓国国内のアンケートでは五輪に関心があると答えた人は45%で、競技場で観戦すると答えた人は5%にとどまっています」(同前)

 前出のフーラ氏が解説する。

「平昌五輪の場合、ウィンタースポーツのファンが多い米国やヨーロッパから開催地が地理的に遠いので、国内での動員が重要になってくる。しかし、韓国人はウィンタースポーツへの関心が低く、国内客の動員が見込めないのです。人気があるのはショートトラックフィギュアスケートくらい。後者も、金妍兒(キムヨナ)の後を継ぐスターが不在の今、関心が低迷しています」

 通常、韓国では国際的なイベントに際しては、民間企業によるチケットの“買い上げ”があるが、あの事件のせいで、今回はそれも鈍いという。

「いわゆる“崔順実(チェスンシル)ゲート”では、サムスンがスポーツ関連の補助金として出した金が、馬術をやっていた崔順実の娘に流れた疑いで捜査のメスが入った。民間企業が二の足を踏むのは当然です。かわりにチケットを“押し売り”されたのが地方自治体や公的企業です」(韓国政府関係者)

 ソウル市の10億ウォンを筆頭に、自治体などが合計で35億ウォン分のチケットを購入。販売率はようやく53%に達したが、今度は「チケットは売れても、観客がいない“ノーショウ”の懸念が生じました」(同前)。

 そこで、購入したチケットを低所得層に無料で配ることにしたという。

「スケートのチケットで15万~20万ウォン(約1万5000~2万円)くらいですが、そもそもチケットだけもらっても、彼らには会場まで行く時間もお金もない。地方から複数回、交通機関を乗り継いでたどり着いたとしても、今度は宿泊施設の問題が立ちふさがります」(同前)

 当初は、五輪特需を見込んだ周辺宿泊施設の宿泊費が高騰。通常、1泊5万~10万ウォン(5000~1万円)のモーテルが、10倍に値上がりする“ぼったくり”が問題になった。

「平昌近郊では、大学生にワンルームを貸している家主が、五輪期間中に観光客に高く貸すために部屋を空けさせたり、再契約を拒否するケースまで報じられました。そこで政府による行政指導が行われ、宿泊費は通常の1.5倍くらいに落ち着きました」(在韓国ジャーナリスト)

 ところが、フタを開けてみれば、予想を上回る不人気ぶりに部屋が埋まらない可能性が出てきたという。

「大会2カ月前の時点で、周辺地域の宿泊施設の予約率はたったの12%。さらに組織委員会が関係者向けに配分する予定だった客室5500室をキャンセルしていたことがわかりました」(前出・韓国政府関係者)

 国際スキー連盟会長のジャン・フランコ・カスパー氏は、仏紙に対して「平昌オリンピックは成功しないだろう」と答えている。

「正直に言おう。平昌五輪の観客数には期待しない」

「2009年に韓国で開催されたスノーボードの世界選手権では、フィニッシュエリアにいたのは私を含めたったの三人だったことを覚えている」

 ついには、こう開き直ってしまった。

「現地に観客は多くは来ないかもしれないが、スポーツが広まるのは主にテレビ放送を通じてである」

北朝鮮はわれわれと同胞だから」
 こうした声を組織委員会は、どう受け止めているのか。ソン・ベクユ組織委員会報道官に話を聞いた。

――チケットの売上が良くない。

「88年の五輪でも、02年のサッカー・ワールドカップでも、直前の購入が多かった。販売率もずっと急上昇しているんです。途中で崔順実ゲートがあり、国民が食傷気味だったこともあったかもしれませんが、開催時には過去の国際大会のように盛り上がると思います。大会の成功には支障はないでしょう」

――北朝鮮リスクにどう対応していくか。

北朝鮮リスクは統一部や外交部が対応すべきこと。国連が五輪停戦決議を出すなど、国際社会が動いている中で組織委でやれることには限界がある。日本でそういったことがあったら、組織委にできることなんてないでしょう?」

――北朝鮮の選手団は参加するか。

北朝鮮は、近年オリンピックに注力できていません。22年の北京冬季オリンピックでも、自力で出場権を得るのは難しいと言われています。IOCも支援すると言っているし、出場して経験を積んだほうが4年後のためになります。馬鹿でない限り、出場したほうがいいと思いますけどね。それに(我々と)同胞なんだから、わざわざ五輪を台無しにするのはおかしいんじゃないですか」

 ソウルから車で約2時間半。平昌の街を訪れると、大雪の中、人影はほとんどない。

「お客さんはあまり増えていませんね。外国人の方も、仕事で平昌組織委員会の関係者と一緒に来るくらい」

 メインスタジアム近くの食堂のオバさんはそう溜息をつく。お昼時にも関わらず広い店内に客はたったの2組。別の店では五輪を見越して、座敷席をすべてテーブル席に変えて準備は万端という。

「カナダや日本人のお客さんが少し増えました。大会が始まれば熱気がでてくると期待します」(従業員)

「嵐の前の静けさ」という言葉もあるが、雪が吹雪く中、バタバタと万国旗だけが騒がしくはためく様から、約1カ月後の熱狂を想像するのは難しい。

週刊文春」編集部


平昌五輪 旅行会社が席確保できずトラブル
1/17(水)
日テレNEWS24

平昌オリンピックで、人気のフィギュアスケートのチケットを販売した旅行会社が、希望する席を確保できずトラブルになっていることがわかった。
東京の旅行会社「グリーンツアー」は、平昌オリンピックの男子フィギュアスケートで、リンクに最も近いA席のチケットを販売していた。
「グリーンツアー」によると、ホテル代などと合わせて約1億円分を販売したが、チケットを確保できるとしていた韓国の業者が、A席よりも後ろのB席やC席のチケットしか確保できなかったという。
チケット購入客のほとんどはキャンセルしたが、まだ代金が返金されていない人もいる。
「グリーンツアー」は韓国の業者にチケット代金約4500万円を返金するよう求めていて、業者側は「あすまでには解決する」と話しているという。


アノニマス ポスト @anonymous201504 22時間22時間前
平昌五輪フィギュアスケートの席確保できず、250人に未だ返金していない旅行会社グリーンツアー、4年前に観光庁から厳重警告を受けている会社だった~ネットの反応「明日までに解決するとか昨日言ってたが…」

純粋に応援しているだけなのに…五輪選手壮行会の「公開不可」に困惑 北海道・十勝地方

1/17(水) 13:36配信

十勝関係9選手の出場が決まっている平昌冬季五輪。2月9日の開幕が迫る中、選手の母校や五輪公式スポンサー以外の所属企業が行う壮行会、報告会を一般やメディアに公開することが禁止され、困惑が広がっている。日本オリンピック委員会JOC)が2020年東京五輪に向け、「宣伝目的」に対する規制を強化したためだが、関係者は「純粋に応援しているだけ」「盛り上がりに欠ける」と意気消沈している。

 JOCが示しているガイドラインによると、五輪代表選手の壮行会は公式スポンサーと自治体、競技団体のみ公開が可能。ただし、会場内で公式スポンサー以外の企業名は露出できず、社名入りのチームジャージーなども着用できない。

 所属企業や出身校など学校主催の壮行会は従来、黙認状態だったが、JOCは「公式スポンサーを保護するため」とし、平昌五輪を契機に規制を強めた。そのため、女子アイスホッケーの志賀葵選手が在籍する帯広三条高校(帯広市)や女子スピードスケートの神谷衣理那選手が所属する高堂建設(同)など、規制を知らず公開したケースもあった。

 女子アイスホッケー近藤真衣選手の母校・江陵高校(幕別町)は15日、同校体育館で壮行会を開き、全校生徒337人が近藤選手にエールを送った。しかし、報道機関には非公開。近藤選手から数日前に学校側へその旨の連絡があったという。

 若宮栄教頭は「連絡がなければ公開する予定だった。やむを得ない面はあるが、
学校を宣伝する気持ちは全くなく、応援している様子を広く知ってもらいたいだけだった」と話す。

 16年のリオ夏季五輪パラリンピックには十勝出身の4選手が出場。五輪前には女子ラグビー桑井亜乃選手とマウンテンバイク山本幸平選手の母校帯広農業高校(帯広市)などで壮行会が開かれた。2年後の東京五輪も十勝勢が出場する可能性は高く、学校関係者からは「企業はわかるが、学校まで規制するのは厳しい」といった声もある。(松村智裕)




平昌五輪に主要国首脳を招く構想が崩れた韓国、
10年前の北京五輪が羨ましい=中国メディア
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モーニングスター株式会社 1/17

開幕まで1カ月を切った平昌冬季五輪。現在の世界の関心事は北朝鮮が最終的に参加するかどうかだが、ホスト国である韓国政府は開会式にできるだけ多くの国や地域の首脳を出席してもらうべく奔走している。中国メディア・今日頭条は15日、大国の首脳を出席させる構想に赤信号が灯ったと韓国メディアから「嘆きの声」が出たとする記事を掲載した。

記事は、「五輪は開催国の国際的地位を確認するための大規模な外交舞台としての役割を担い続けてきた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、日・米・中・ロという重要な4カ国の首脳に対して早々に平昌への招待状を出したが、誰からの快諾ももらえていない」としたうえで、韓国日報が「韓国政府が持っていた4カ国首脳の平昌五輪出席という構想の望みに、赤信号が灯った」と伝えたことを紹介している。
 そのうえで、4カ国の首脳が招待を受けそうにない背景について分析。ペンス副大統領の派遣を表明した米国については、「想定の範囲内。ペンス氏の派遣は、韓国に対する支持を示す一方で、トランプ大統領と北朝鮮代表団が同席する状況を避けるための策だ」とした。
 また、文大統領が最も力を入れて招待したとされる中国については「高高度防衛ミサイル(THAAD)が喉に刺さった骨であり、この骨が抜けなければ中韓関係に春は来ない」とし、現状では多忙な習主席がスケジュールを空ける可能性が高くないとの見方を示している。
 日本については、「韓国が反故にしようとしている慰安婦合意に対し、安倍晋三首相は1ミリたりとも動かさないという強い姿勢を示している。慰安婦問題を五輪出席のカードにしてくるであろう安倍首相に、文大統領は応じられるのか」とした。そして、プーチン大統領については「なおのこと出席する可能性は低い。ロシアはドーピング問題により国としての参加を禁止されているのだから」と説明した。
 記事は、「韓国人は08年の北京五輪を羨ましがっている」とし、韓国日報が「これまで最多の各国首脳が出席した五輪が北京五輪であり、100あまりの国の首脳が出席した」と伝えたことを紹介。「各方面をみな満足させ、各大国の首脳に来てもらおうというのは、毎日が綱渡り状態にある文大統領にとっては明らかに完成しえない任務なのだ」と結んだ。(編集担当:今関忠馬)


【平昌五輪】「政治ショー」に批判噴出 韓国の若者が不公平に「ノー」
 唐突なアイスホッケー女子合同チーム、入場行進に統一旗…
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【ソウル=桜井紀雄】平昌五輪への北朝鮮の参加をめぐり、韓国政府がアイスホッケー女子の南北合同チーム結成を推進していることに韓国内で反対意見が噴出している。特に文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持層であるはずの若者らが強く反発。合同入場行進で国旗ではなく、朝鮮半島を描いた統一旗を掲げることにも保守層を中心に拒否感が根強い。
 「五輪目前にこうした話が出るのは衝撃的。選手らに間違いなく影響する」
 アイスホッケー女子韓国代表のマリー監督は16日、仁川(インチョン)空港で記者団に、合同チーム結成についてこう懸念を示した。選手の一人も韓国メディアに「ひどく失望している」と話した。
 合同チーム案は9日の閣僚級会談で韓国側が北朝鮮に提案。既存の韓国代表23人に北朝鮮選手数人を合流させる構想で、政府は「韓国選手に被害はない」と説明している。だが、現行の規定では1試合に出場できる選手は22人に限られ、韓国選手の出場機会を奪うことになりかねない。
 李洛淵(イ・ナギョン)首相が16日、韓国女子は「メダル圏内にない」と発言し、さらに波紋が広がった。ネット上では「韓国選手らは青春をささげて努力してきたのに政治ショーで水の泡だ」などと合同チームに否定的な書き込みが目立ち、大統領府ホームページにも反対意見が数多く寄せられた。
 実力ではなく、南北融和という政治目的で北朝鮮選手の出場を五輪開幕間際になって推すことに、特に若者らの反発が強い。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の友人、崔順実(チェ・スンシル)被告の娘の名門女子大への裏口入学といった「不公平」に憤り、大統領選で文氏を支持した層が今度は文氏が進める「不公平」な北朝鮮参加に“ノー”を突き付けているわけだ。
 聯合ニュースによると、五輪の初戦で韓国と当たるスイス連盟も「公正ではなく、競争をゆがめるものだ」と憂慮を表明した。
 都鍾煥(ト・ジョンファン)文化体育観光相が国会で、合同入場行進で統一旗を掲げる方針を示したことにも批判が起きた。最大野党、自由韓国党議員は「五輪開催国が国旗を掲げず入場したことはない。多くの国民が憤っている」と主張。李首相は「最初に大型の国旗も入場する」と釈明するが、他の野党代表らも反対する立場を示した。
 保守系紙の朝鮮日報は、社説で「国旗とアイスホッケー女子選手らを南北政治の道具として犠牲にしてはならない」と強調した。


南北合同チーム結成に見る文大統領の身勝手
平昌オリンピックで度を越した政治利用
     
薬師寺 克行

平昌五輪への北朝鮮の参加を国際オリンピック委員会(IOC)が認めたことで、南北合同の選手団が開会式で入場行進することになり、北朝鮮に関して久しぶりに前向きの話が出てきたように見える。しかし、ことはそれほど単純ではない。外交・安全保障政策上の観点からは、「韓国政府が北朝鮮にいいように利用されている」などという批判が出ている。さらには五輪の政治利用という観点から見ても問題だらけである。特にひどいのが「女子アイスホッケーの合同チーム結成」だ。
 IOCの決定では、北朝鮮はスキー、スケート、女子アイスホッケーの3競技に合計22人の選手と役員やコーチなど24人を派遣することが承認された。このうち女子アイスホッケーは12人で、試合ごとに北朝鮮の選手を最低3人起用するという。五輪開催までわずか20日余りという段階で、韓国のアイスホッケー女子チームに、これまで一度も一緒に練習したことすらない北朝鮮選手を加えるというのは、この競技を多少でも知っている人であればとても考えられない話である。

アイスホッケーという競技の性格を無視

 アイスホッケーは「氷上の格闘技」といわれる。スケートリンク上で選手が激しくぶつかり合いながら、スティックを使って、直径3インチ(7.6センチ)の硬質ゴムでできた円形の小さなパックを狭いゴールに打ち込む競技だ。乱暴な競技に見えるが、計算し尽くされたチームプレーが不可欠だ。選手たちは前後左右に巧みに滑りながらパックを運び、仲間の選手にパスを回し、ゴールキーパーの体の重心の動きを見ながらわずかな隙に打ち込む。仲間同士の連携、機敏な動きや瞬時の判断などが不可欠で、力だけでなく繊細さも必要な複雑なスポーツである。
 試合に登録するのは1チーム23人で、このうち22人がベンチに入り試合に出る。ゴールキーパーは3人。残る20人は5人1組のセットを作り、試合中にセット単位で頻繁に交代する。というのも前傾姿勢を維持しつつ氷上を走り回ると体力の消耗が激しいため、どんな選手でも最長で2分間のプレーが限界と言われているためだ。
 したがって日常的な練習では、個々の選手がプロレスなどの格闘技の選手に並ぶ筋肉トレーニングをするとともに、氷上ではセットを中心にそれぞれの癖や得意技を踏まえつつ連係プレーの上達を目指す。時間をかけたチームづくりが求められるスポーツでもある。
 世界的には米国やカナダ、ロシア、そして北欧や東欧諸国が圧倒的に強い。世界ランキングを見ると、男子は日本、韓国ともに20位台だが、女子は日本が7位と健闘しており、韓国はこちらも20位台である。五輪に出場できるのは男女とも8チームだけ。日本女子は実力で五輪出場を続けているが、韓国は男女とも実績だけで五輪に出場したことはない。
 そこで平昌五輪開催を前に韓国政府が目指したのが開催国チームの出場権獲得だった。アイスホッケーの場合、世界のトップクラスまで行かなくとも、ある程度の力があれば開催国チームに出場権が与えられる。それを目指して韓国は4年計画で男女チームの強化を進めてきた。とはいえ韓国の競技人口は少なく自前で強いチームを作ることは困難なため、実力ある外国人選手の帰化を積極的に進めた。その結果、男女とも国際大会での成績が上昇し、開催国出場権を獲得したのだ。
 そのような事情のため、五輪に出場する韓国選手をみると韓国チームは男子7人、女子4人の選手がカナダや米国から帰化した選手となっている。男子の場合は3分の1が帰化した選手で占められる。
 ここまで苦労して手に入れた五輪出場権だが、開催直前になって文在寅(ムン・ジェイン)大統領が女子チームは南北合同とすると決めてしまった。関係者に対しては事前に何の相談もなかったようで、女子チームのメンバーは「米国での合宿を終えて1月中旬に帰国、仁川国際空港に到着した時に初めて聞かされた。選手は深く傷ついており、士気も下がっている」と韓国メディアに語っている。

上位入賞できないので政治的に利用しやすい

 それはそうだろう。アイスホッケーのトップ選手の多くは幼少期からスケートを履き、一般人の靴と同じようにスケートを操る。大半の選手が10年以上、トレーニングを続け念願の五輪出場を果たした。韓国の実力から考えると、選手にとっては最初で最後の五輪出場となるだろう。ところが北朝鮮の選手の参加で一部の選手ははじき出される可能性が高まった。かわいそうな話であるが、それだけでは済まない。文在寅大統領の決断やIOCの判断は矛盾と問題に満ちているのだ。
 まず、南北合同チームはなぜ女子だけなのか。アイスホッケー関係者の間では、「韓国の男子チームは7人もの帰化した選手を加えるなど強化に力を入れてきた。本番で勝利する可能性も出てきている。それに対し女子チームは、上位進出はもとより1勝することも難しいとみられている。だから、女子チームだけ合同としたのであろう」というのだ。実際、李洛淵(イ・ナギョン)首相が記者との懇談会で「女子アイスホッケーは韓国が世界ランキング22位、北朝鮮が25位でメダル圏にない」などと発言しため批判を浴び、後日謝罪している。
 南北の連携や融和を示すには個人競技ではなく、両国の選手が一緒になってプレーする団体競技のほうが効果的だ。しかし、上位入賞が期待される競技での合同チームは国内の反発を買いかねない。そんな中では女子アイスホッケーが一番やりやすい。韓国政府はそんなことを考えたのだろう。これでは関係者はたまったものではない。
 IOCが南北合同チームの登録選手数を両国選手合計で35人としたことはさらに問題である。他の国は規定通りの23人だ。そして、各国とも同じ選手が出場し、激しく体力を消耗する試合をこなしながら優勝を争う。ところが合同チームは他国チームより圧倒的に人数が多くなるため、試合ごとに疲れていない選手を出場させることが可能になる。
 35人の登録選手が具体的にどういう条件で出場できるのか、細部はまだ明らかになっていないが、このままでは同じルールの下で競うという最低限のルールが無視され、極めて不平等、不公平な条件で競技が行われることになる。登録人数増は韓国が要求し、IOCが認めたようだが、決定に際してはスポーツの専門家がいるにもかかわらず、なぜ、こんな非常識な話が認められたのだろうか。
 南北合同チームと試合をする可能性がある日本チームの関係者は、「主催国の大統領が絡む政治的判断であろうから、だれもIOCの決定に文句を言えない。しかし、こんな不平等な条件の下で合同チームが勝利を重ねたらもはやスポーツとは言えない」と批判している。

「疎通」を掲げながら、自身が国民世論を無視

 韓国国内では、文在寅大統領が合同チームの結成を関係者に一方的に通告した手法にも批判が集まっている。文在寅大統領は前任の朴槿恵(パク・クネ)大統領が国民世論の声を聞かなかったとして「疎通」を重視するという公約を掲げて当選した。従軍慰安婦問題について朴政権は慰安婦の声を聴かないで日韓合意に踏み切ったと批判している。しかし、アイスホッケーについてはそうした「疎通」を完全に無視したわけで、朴政権と変わらない、という声が出てくるもの当然だろう。
 文在寅政権は発足後一貫して北朝鮮の核・ミサイル開発に対する米国など国際社会の厳しい対応に微妙に距離を置き、南北対話の機会を探ってきた。平昌五輪は南北融和を演出する格好の場である。そして女子アイスホッケーを最も使いやすい競技であると考えたのであろう。しかも、登録選手数を他国チームより多くするという横紙破りまでやってしまった。これ以上ないほどの政治利用であり、五輪の本来のあるべき姿を開催国の元首が堂々とゆがめてしまったのである。
 わからないのは、五輪を最大限政治利用する文在寅大統領が今後、北朝鮮問題をどう展開させようとしているのかということだ。南北間で五輪問題は話し合っても核・ミサイル問題はテーブルに乗っていない。五輪を一時的な人気取りに使ったのであれば、大統領の罪深さは計り知れないものになる。