日経新聞

平昌五輪まで半年、熱高まらず チケットは目標の2割
 開会式スタジアムや競技場の建設は順調

2017/8/13 日本経済新聞 朝刊

 2018年2月の韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪開幕まであと半年。開催予定地では大会施設の整備が大詰めを迎え、外国人観光客の受け入れ準備も着々と進む。一方、チケット販売はまだ目標の2割で、国全体の「五輪熱」は上がらない。大会関係者はムード盛り上げに腐心する。

 7月下旬の平日夕。首都ソウル発の高速バスに乗った。朝鮮半島を横切る高速道路を東進すると、約2時間でスキーなどの雪上競技が行われる平昌郡に到着した。
 平昌郡は韓国北東部の山岳地帯で、山あいにスキー場やプールを備えたリゾートホテルが点在し、ウインタースポーツを楽しむ場や避暑地として知られる。
 大会組織委員会が事務所を構える横渓(フェンゲ)。食堂や衣料品店などが並ぶメインストリートを抜けると、広大な更地のそばに開会式に使われる「オリンピックスタジアム」が建つ。
 スタジアムは五角形の広場を3万5千人収容の観客席が囲む。7階建ての屋内スタンドでは、内装工事を慌ただしくこなす作業員の姿があった。工事責任者によると、7月下旬時点の完成率は87%。9月末に竣工する見込みだ。競技施設に関しては既存、新設ともに完成率が95%超。「いつでも競技が行える状態」(組織委)という。
 今年12月に高速鉄道が開業すると、仁川国際空港―平昌間が約1時間半で結ばれる。横渓の飲食店従業員、ヤン・ダバイさん(26)は「町並みが日を追うごとに新しくなっている。五輪がもうすぐだと実感する」と声を弾ませる。

 大型ホテルの建設工事も相次ぐ。大会期間中は平昌とスケートなどの氷上競技が行われる沿岸部の江陵(カンヌン)市などで約4万2千室が稼働見込みという。
 江陵市の韓国風しゃぶしゃぶ店「チェソンダン」は昨年、欧米系の利用者に配慮して板張りの座敷をテーブル席に変更した。店長のホ・ヒスクさん(50)は「韓国を好きになってもらえるように丁寧な接客を心がけたい」と意気込む。
 一方、観戦チケットの発売枚数は8月初旬時点で約22万8000枚と最終的な目標の2割。うち韓国の国内向けは約5万1000枚で目標の1割にも届いていない。ソウル市の女子高生(18)は「ウインタースポーツはやったことがない。冬季五輪は興味が湧かない」と話す。
 また前大統領の弾劾・罷免で新政権が発足。北朝鮮弾道ミサイルの発射実験を繰り返す。江陵市の自営業男性(48)は「五輪の話題は埋没しがち」とこぼす。
 五輪は今後、2020年東京夏季、22年北京冬季とアジアでの開催が続く。組織委のナンシー・パク広報担当は「本番に向けたムードを盛り上げ、平昌五輪を成功させたい」と力を込めた。
桜田優樹)



2026年冬季五輪、膨れあがる経費 立候補は札幌だけ?                   
2016/12/8 日本経済新聞 朝刊


2026年冬季五輪の招致に札幌市が乗り出す意向を示している。26年大会の開催都市が決定するのは、現在のルールでは7年前。4年後の東京五輪の前年となる19年の国際オリンピック委員会IOC)総会である。
 その札幌の五輪招致の見通しは厳しいとされている。冬季大会の開催が東アジアで連続するからだ。18年は韓国の平昌、22年は北京。本来は夏季、冬季のそれぞれで五輪開催地が同じ大陸、地域で続くのは避けるという暗黙の了解があるのだが、これで26年までも札幌となれば冬季は3大会連続で東アジアが舞台。しかも20年夏季は東京だ。現実的にIOC委員たちが札幌に票を投じるとは考えられない。
 ところが、かつては各国の代表的な都市が華々しく争った五輪招致レースは様変わりした。欧米各都市の五輪招致熱は冷めてしまった。理由は莫大な経費の負担。ロシアで開催された14年ソチ大会には五輪史上最高の5兆円以上を投じたとされる。22年大会が再びアジアとなったのも、ノルウェー政府が財政保証をしなかったオスロが撤退して、最終的に北京とアルマトイカザフスタン)しか残らなかったからだ。
 来年決定する24年夏季大会の招致レースからもハンブルク、ローマなどが脱落した。今では立候補の前に住民投票で民意を問うのが当たり前の手続きになってきた。
 この状況では26年大会への立候補都市が結果的に札幌市だけというケースすら起きかねない。開催を望む都市がなくなってしまえば、五輪は存続の危機を迎える。IOCが20年東京大会の経費の削減を躍起になって求めるのも強い危機感の表れだ。
編集委員 北川和徳)
日本経済新聞2016年12月8日付朝刊]

ソチ五輪は、建設費よりも、テロ警戒のセキュリティ費用がものすごく高くついたんではなかろうか。東京もそれが大変なように聞く)



資源大国で資金は潤沢な様子で、自然の積雪も多いカザフスタンを落して、
平昌と同じく積雪がなく、冬季スポーツに関心が低そうな北京を選んだIOC
どうしても、動くお金のことを考えているとしか思えない。
平昌に決定したときは、サムスン全盛で韓国経済がよい時だった。
ブラジル、リオもそう。穀物メジャーが入りこんでいて、今のような経済のひっ迫や治安問題や軍の出動は聞かなかった。ジカ熱もなかったし。
北京に決定したのは、その時中国経済がよかったからではないか?
現在は不動産バブルが崩壊したという噂で、あまりよいニュースを聞かないから、
それもどうなることやら。中国の自力の方がある気はするが・・・
IOC自身が、スポーツの大会を開くつもりではなくて、経済を廻す梃子にしようとしているのか、その経済に便乗して、配る予算をたくさん出せれば開いてもいいという姿勢なのか。
若い時代の結果一つで後は役員になって役員報酬で一生行くのなら、ロシアのように
さっさとメダル年金を出すべきだ。出せないから、IOCに頼るんだろうが。
資金を誰かが出さなければ、スポーツだけをやっているわけにはいかない。


平昌五輪:IOC韓半島情勢を注視

外信「平昌からDMZまで100キロ」

朝鮮日報日本語版 2017/08/11 08:28

北朝鮮の核危機が高まっているのを受けて、国際オリンピック委員会IOC)が「韓半島朝鮮半島)で起こる状況を細かく注視している」と明らかにした。オーストラリアの日刊紙「ザ・オーストラリアン」やカナダのテレビ局「グローバル・ニュース」などが10日、報道した。

IOCは「(北朝鮮の核危機の)進行状況に関する情報をリアルタイムでチェックしている。平昌冬季五輪の準備が円滑に進むよう平昌組織委員会と協力している」と述べた。

IOCの声明は、北朝鮮の核危機により180日後に迫っている平昌冬季五輪の安全な開催に懸念が膨らんでいるのを払しょくするためのものと受け止められている。ただし、一部外信は五輪開催地域と北朝鮮国境までの距離があまりないことに言及して懸念の声を上げている。

五輪開催地の江原道平昌・江陵は非武装地帯(DMZ)と約100キロメートル離れている。「ザ・オーストラリアン」は「江原道の山岳地帯から(車で)1時間ほどでDMZに着くため、米国・英国・オーストラリア政府は自国選手団の安全に苦慮している。最後の手段として不参加も考慮するかもしれない」と報じた。



五輪「大動脈」間に合うか 築地移転決まっても綱渡り
 跡地に3000台の仮設駐車場、環2は段階的に開通

2017/6/30 日本経済新聞 夕刊・朝刊

 東京都の小池百合子知事が築地市場の移転を決断したことで、2020年東京五輪パラリンピックの選手・関係者を輸送する大動脈作りが再起動する。築地跡地に車両3000台を収容できる仮設駐車場などをつくるとともに、幹線道路「環状2号(環2)」を段階的に開通させる。もっとも築地市場建物解体には約1年半、更地にして駐車場などに整備するには約1年かかる見通し。大会の開幕は3年後に迫っており、綱渡りのスケジュールとなる。

 五輪・パラリンピックの選手・関係者の輸送拠点となる「デポ」は、築地跡地を通る「環2」の北東に整備する。約23ヘクタールある築地跡地のうち十数ヘクタールを活用。五輪前に築地の地上部に開通する環2から出入りできるようにする。現在築地市場にある一部の立体駐車場も使い、大会期間中に使う輸送車両6000台のうち、バス1000台、乗用車2000台の拠点にする。残り3000台分の駐車場は都内数カ所で確保する。
 デポには駐車場のほか、給油所や洗車場、運転手が利用する食堂や休憩所を整備する。車両の燃料施設や洗車場の設置も検討する。テロ対策として、車両や運転手の入場チェックや拠点内の監視もする。
 築地は晴海の選手村に近いうえ、新国立競技場(新宿区)など競技会場への動線上にあり、輸送拠点の立地として優れている。都と組織委は築地市場の跡地を五輪の仮設駐車場として使う方針だったが、小池知事が築地市場の移転を延期したため計画が停滞していた。
 築地に駐車場を整備できなければ、3000台分の代替地を確保する必要があったが、都内に適地は少ない。駐車場を都内に分散配置すれば、大会中に都内各所で渋滞が発生し、経済活動や市民生活に悪影響が出る懸念もあった。小池知事が6月20日豊洲市場への移転と築地跡地の五輪での活用方針を表明したことで、輸送拠点の整備環境が整った。

 もっとも20年夏の東京五輪パラリンピックに間に合わせるのは簡単ではない。築地市場の解体とデポの整備に単純合算の約2年半かかるとすると、17年末にも市場を移転する必要がある。一方で小池知事は6月21日の日本経済新聞のインタビューで、市場移転時期は18年5月を目指す方針を表明した。都は解体工事と並行して駐車場整備などを進めて、工期を短縮する考えだ。
 ただ築地市場の移転が、小池知事の思惑通りに進むとは限らない。市場の幹部からは「18年5月では準備が間に合わない」と難色を示す声が早くも上がっており、協議の行方によっては移転時期がずれ込む可能性がある。
 市場の移転時期は、五輪・パラリンピック期間中に選手らの輸送の要となる環2の整備スケジュールにも影響する。小池知事はすでに築地跡地の地下を通すトンネルの大会前完成を断念。地上部道路のみを先行開通させ、大会での輸送に使う方針だ。その地上部道路の整備は19年春までの市場移転が前提で、移転時期が遅れれば環2を使う輸送計画全体に狂いが生じて、大会の運営に支障が出る恐れがある。
 そもそも環2の地上部道路は片側1車線しかなく、片側2車線で虎ノ門方面と直結する地下トンネルに比べると交通処理量で大きく見劣りする。予定通り地上部が先行開通できたとしても交通渋滞の懸念がつきまとう。大会期間中は一般車両の通行量をコントロールする交通需要マネジメント(TDM)などソフト面の対策が不可欠とみられる。
 五輪・パラリンピックの輸送体制の整備は時間との戦いで、市場の移転時期を巡る今後の協議がカギとなる。小池知事のかじ取りが問われる。
日本経済新聞夕刊2017年6月27日付と同朝刊28日付を再構成]