高校野球改革は進まない


鈴木長官、高校野球見直しを要望 過密な試合日程「変わらないと」

8/8(木) 17:53配信 KYODO

スポーツ庁鈴木大地長官は、高校野球で投手の連投や投げすぎが懸念されている問題で「『高校で燃え尽きてもいい』は時代遅れ。故障なく精いっぱい戦うことが重要」と述べ、過密な試合日程の見直しを含めた対策の必要性を指摘した。7日に共同通信のインタビューに応じた。投手の健康管理を重視する風潮が社会に広まりつつある中、「世の中の流れを敏感に察知し、高校野球は変わらなければいけない」と一層の改革も求めた。

 米国では18歳以下の投手を対象とした「ピッチ・スマート」が2014年に発表され、
1日の投球数の上限や適切な登板間隔、年間の休養期間などを勧めている。


「佐々木朗希」の後味悪い幕切れ 進まぬ高野連の改革、“感動話”で商売する大人たち

8/5(月) 17:00配信  デイリー新潮

高校野球ファンがその夜、呑んだビールの味は、いつもよりずっと苦かったに違いない。賛否両論渦巻く163キロ「佐々木朗希」投手の「登板回避」。32歳の若き監督の決断は、その意に反して実に後味の悪い幕切れを生んでしまった。彼を追い詰めた本当の「戦犯」は……。

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「正直、肯定も否定もしづらいんです。難しい問題ですよね」

 今回の騒動についてそう述べるのは江川卓氏である。

高校野球をやってきた一人として言えるのは、球児は甲子園に出たくて頑張っているということ。僕はラッキーにも出場できましたが、甲子園は自分の人生をかけてもいいと思える特別な場所なんですよ。この気持ちは大船渡の監督にも選手にもあったと思います」

 江川氏と佐々木投手には共通点が少なくない。高校生ではバットにかすりもしない剛速球の持ち主。ワンマンチームの絶対的エース。また、東北の生まれであることも同じだ。

「僕が佐々木投手の立場だったら“投げたい”と言ったでしょう。僕らの時代は、4連投も5連投も当たり前。“投げたい”と言えば、壊れても投げさせる時代でしたからね。ただ、40年も経って時代は変った。アメリカの練習方法、考え方も入ってきた。その意図は尊重すべきです。これは本当に悩ましい問題なんです」

 試合から時間が経過した今も「登板回避」について世間はまさに百家争鳴。賛成、反対双方の議論が喧しい。それこそが江川氏の言うところの「難しい問題」である証左であり、その根本には今日の事態を招いたある「戦犯」の姿が見える。
“千日評定”
「そもそも、責められるべき根本問題は、スケジュールの過密さなんです」

 と憤るのは、『甲子園という病』の著者で、スポーツジャーナリストの氏原英明氏である。

「現状、夏の甲子園の地方大会は、高校の期末試験が終わる7月の1週目からになる。すると、2~3週間で決勝までのスケジュールを組まなければいけない。そうなれば、連投を強いられるのは当たり前です。例えば5月辺りから土日を使って試合を組めば、エースが投げても十分な間隔が空き、故障を防げるような日程が組めるはずなのです」

 また、ライターの広尾晃氏も述べるのだ。

「未だに日本の高校野球界が球数制限に動いていないことも問題なんです。韓国でも台湾でも、高校生の大会では1試合100球程度の球数制限を導入している。野放しなのは日本だけです。仮に導入されていれば、監督が悩んだり、批難されたりする以前に、ルール上、選手を守ることが出来る」

 実は、こうした議論はかれこれ20年ほども論じられてきている。しかし、遅々として進まないのは、高野連を中心とした高校野球界の責任が大きい。

「“そろそろそういう問題を考えないといけない時期に来ている”と言いながらも動きが鈍い。責任を取りたくないからなのか、とにかく現状維持、自己の保身の方向に走りがちな組織であると思います」(氏原氏)

「高校生の身体のことより、連投に耐えて頑張った、という汗と涙の感動ストーリーで商売をしている大人たちに影響を与えないように、という気持ちが大きいのではないでしょうか。だから、いつまで経っても変わらない“千日評定”が続いているのです」(広尾氏)

 その一方で、タバコを吸ったとか、ガッツポーズが派手だなどという話には異様な速さで対応するのだから、何をか言わんや。まさに今回の一件の隠れた「戦犯」と言われても仕方あるまい。

 甲子園の夢が潰えたその週末、大船渡高校の周辺を訪れると、ユニホーム姿でランニングをする佐々木投手の姿が見られた。声をかけると足を止めて、

「すみません、学校に言われているんでお話は出来ないんです」

 と言い、頭を下げて走り去っていった。気温30℃超の炎天下。きっと彼は既に“その先”の何かを見据えているに違いない。

大谷翔平を見た時も驚きましたが、佐々木の球威はそれ以上。163キロを目の前で見た時には、本当にキャッチャーが危険だと思ったほどの暴力的な球でした」(佐々木の取材を続けるライター・菊地高弘氏)

 それほどの才能が甲子園の土を踏めなかったことが、吉と出るか凶と出るか。
監督の判断は「英断」か「独善」か。論争は果てないが、その決着は、今後の彼の活躍いかんということなのだろう。

週刊新潮」2019年8月8日号 掲載


これでまるわかり! 日本の高校野球で「球数制限」が進まない理由!

8/3(土) 9:07配信 FRIDAY

『球数制限』の著者・広尾晃氏インタビュー「野球少年の未来を守れ!」

8月6日(火)から始まる夏の甲子園。その開幕を前に高校野球界に爆弾が投下された。表現は悪いが、そういっても過言でない一冊の本が世に出た。その名も『球数制限~野球の未来が危ない!~』(ビジネス社)という。昨年の吉田輝星(金足農・当時)、今年の佐々木朗希(大船渡)などの投げすぎ問題がクローズアップされる中、「球数制限」の歴史、医学的・教育的側面、スポーツマンシップとの関係、世界の動向などを丹念に取材したタイムリーな本となっている。そこで著者の広尾晃氏(プロフィールは記事末尾に掲載)に緊急インタビューを行い、この本に込めた思いを聞いた。

昨夏の甲子園で6試合、881球を投げた吉田輝星。プロで大成できるのか。

そもそも「球数制限」とはどういうもので、その議論はなぜ起こったのでしょう。

アメリカでは「投手が生涯に投げられる球数は決まっている」という考えがあります。だから若いうちにたくさん投げることはさせません。1試合当たりの投球数と登板間隔を指導者が管理していました。ただ、近年はMLBに売り込むために試合で無理に投げさせるスカウトが出てきたためMLBは、「ピッチスマート」(子供の健康被害を考慮して年齢別に投球数や登板間隔を細かく定めたもの)の導入に踏み切りました。世界に「球数制限」が広がったのは2006年WBCがきっかけです。MLB球団は選手の故障に備えて保険をかけましたが、保険会社が「投手に球数制限をしないと契約を受け付けない」といったためにWBCでは「球数制限」が導入されました。
これをきっかけに韓国や台湾では「球数制限」の議論が起こりましたが、日本の反応は鈍かった。結局、2013年になって済美の安樂智大(現楽天)が春の甲子園で772球を投げたのを、米のメディアが「異常事態」と書き立てたことで、日本のメディアも「球数」について書くようになりました。

複数の医師やトレーナーの方にも取材されていますが、異口同音に現状の野放し状態に警鐘を鳴らしていますね。

率直に言えば、医師の多くは「日本の指導者に故障のメカニズムを理解してもらうのは難しい」と感じています。サッカーと違ってライセンス制度がない日本野球では、医学のことを全く知らなくても、学ぶ気がなくても指導者になれます。言い方は悪いですが、レベルの低い指導者が多いわけです。そんな指導者に酷使される野球少年は、被害者だと思います。

アメリカやドミニカ共和国、韓国、台湾の現状もリポートされていますが、野球の盛んな国で「球数制限」がないのは日本だけなんですね。

今回、最も衝撃を受けたのはこのことでした。台湾でも韓国でも「球数制限」は、導入するのが当たり前で、それをどのように運用するかに議論が移行しています。台湾や韓国は日本野球の影響を強く受けていますが、そんな国でも「球数制限」は当たり前になっています。「球数制限の是非」を未だに議論している日本は、周回遅れになっていると思います。

なぜ日本では遅々として導入されないのでしょう。

「甲子園」の一語につきるでしょう。春夏の大会が、日本最大のスポーツイベントになり、「権威」「伝統」になってしまったために「変革」できなくなってしまいました。
また「甲子園」でビジネスをしている企業や人もたくさんいます。そうした「大人の事情」が、「子供の未来」よりも優先されているのが唯一、最大の理由です。


現役の高校生、指導者、またプロで活躍した名選手たちは「球数制限」にこぞって反対しています。なぜでしょう。そして、その論調の問題点は?

自分の将来まで見通してプランを立てている高校生はほとんどいないと思います。若者は「今」しか見えていないものです。だから「もっと投げたい」という。「故障のリスク」を聞かされても「自分は大丈夫」と根拠なく思ってしまう。本来は、指導者が「そういうものではない」というべきだと思いますが、指導者は故障のリスクを選手に押し付けています。「球数制限」を導入すれば、今までのやり方を大きく変更しないといけないからです。また今までの「酷使」を非難される可能性もあるからです。投手の故障で責任をとった指導者はこれまでほとんどいません。だから罪の意識も責任も感じていないわけです。プロ野球での成功者は過酷な高校野球を生き抜いてきたサバイバーです。自分たちの「成功体験」を語るだけで事足れりとしています。
大人は「球数制限」の「現実」に向き合っていないと思います。高校生の「未来」の問題を自分の問題とは思っていない。

野球経験者の言説ばかり取り上げるメディアにも問題がありますね。

何事によらず、メディアは「非難されること」を恐れています。だから「人の口を借りて意見を言ってもらう」ことしかしません。しかも「賛否」を両方紹介します。「球数制限」の問題は、賛否両論があるものではなく、世界の趨勢を見ても導入の方向で進まざるを得ないと思いますが、メディアは高校野球の主催者だったこともあり、はっきりものが言えなくなっています。「球数制限すべきだ」と言えば、「今まで何百球も投げた投手を絶賛してきたじゃないか」と非難されかねないからです。
残念ながら、大新聞やテレビは世論が「球数制限」に決定的に傾いた後に、こっそり後ろからついてくると思います。
これはスポーツのみならず、日本の「メディア・言論」の危機的状況を表す一例だと思います。

驚いたのは1994年の時点で「投手のための障害予防研修会」が高野連朝日新聞の主催で開かれていたことです。そこでは「1日60球~80球をめどにすること」とあります。なぜこれが守られなかったのでしょう。

牧野直隆会長の次の脇村春夫会長までは、高野連トップダウンで物事を決めてきました。是非は別にしてリーダーシップがありました。しかし以後の会長は、トップダウンで物事を決めなくなり、合議制のようなスタイルになりました。これによって、果断な動きができなくなりました。
牧野会長の考えは、現場への影響が非常に大きいので、引き継がれることなくいつの間にかうやむやになったのだと思います。
今の日本高野連は、改革するとしても自分たちに大きな影響が生じないようにできるだけゆっくり、ミニマムでやっていこうと考えているのだと思います。タイブレーク制」の導入だけでも3年かかっています。日本高野連の幹部で「球数制限」に真っ向から反対している人はいません。「時期尚早」という人が多い。本音を言えば「やるのなら、俺たちが一線を退いてからにしてくれ」と思っているのではないでしょうか。

今夏の佐々木朗希選手をめぐる騒動を見ても、もはや「球数制限」を導入するか否かでもめている場合ではない、すぐに導入して、さらに過密日程、飛びすぎる金属バット、リーグ戦方式の導入などについて議論すべきだと強く感じます。

「球数制限」は、高校野球改革の入り口にすぎません。おっしゃるように、これを契機として、様々な改革を進める必要があるでしょう。「有識者会議」(高野連が13人のメンバーを招いて設置した。4回の会合を経て、11月に高野連に答申をする予定)がどんな結論を出すにせよ、それで一丁上がりではなく、これが始まりにならなければなりません。

この本をどういう人に読んでもらいたいですか。

導入に賛成であれ、反対であれ、「球数制限」を真剣に考えたい人に、読んでいただきたい。とにかく「知ってから議論する」ために活用してほしいと思います。

広尾 晃(ひろおこう)
1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。


高野連の名前は出ても、どこの誰と誰がどういう資格でメンバーなのかが全くわからない組織。
考え抜いた結論をぶつけ合って議論百出するのなら、世間もよくわかるのに。


酷暑から野球少年守れ 1日2試合、高校より過密

8/7(水) 8:58配信 KYODO

夏休みを迎え各地でスポーツ大会が行われているが、大きな課題となっているのが熱中症対策だ。中でも小中学生の大会は1日2試合のダブルヘッダーが組み込まれることも多く高校野球よりも厳しい日程とも言える。専門家は「子どもたちを守るために対策を」と訴える。酷暑が続く近年は一部で日程を緩和する動きも出てきた。

 日本野球機構NPB)と全日本軟式野球連盟(全軟連)が今月、愛媛県で開催した小学生女子の全国大会「NPBガールズトーナメント」では、当初はダブルヘッダーを含む日程が組まれたが、開催期間を延ばし1日2試合を回避した。