中央競技団体のガバナンスコード(組織統治)


【主張】ガバナンスコード 
 スポーツ界は危機感持て

 今のスポーツ界は、社会からの批判に対する感度が鈍い。社会常識とのずれを認識する危機感も驚くほど乏しい。何よりも、自発性を欠いているのは致命的である。

 国内競技団体(NF)が守るべき規範を示す「スポーツ団体ガバナンス(組織統治)コード」が、スポーツ庁の主導で策定された。
 国の関与がなければ、自らを律するルールさえ作れない。これがスポーツ界の実情である。

 同コードは、理事の就任に際して定年制や最長10年という任期の上限を設けた。女性理事の割合を40%以上、外部理事を25%以上とする目標も掲げている。
組織の硬直化を防ぐ上では、いずれも妥当な項目だろう。
 策定に関わった有識者からは「スポーツ界の憲法ができた」と自賛の声も聞かれるが、大事なのはその実効性である

 NFは競技を統括する唯一の国内組織と位置づけられている。民間企業なら一つの不祥事が命取りになるが、NFは他の組織に取って代わられる心配がない
 競争相手のいない環境が組織から緊張感を奪い、規律の緩みを生んでいる。
厳格なルールなしに、自浄作用は期待できない。
 その監視役となるのが、多くのNFを傘下に抱える日本オリンピック委員会(JOC)や日本スポーツ協会(JSPO)などの統括団体だ。同コードの順守状況について、NFの適性審査が来年度から義務づけられる。

 JOCが統括団体として不適格であることは、2020年東京五輪招致をめぐる
不正疑惑への対応を見ても明らかだスポーツ庁などは「円卓会議」を設置し、統括団体への指導や助言を行うとしている。スポーツ界に高い規範意識を根付かせるためにも、同庁には強い指導力を発揮してほしい。

 NFには年に1度、同コードの順守状況を公表する義務も課された。あきれたことに、NFからは「競技団体の実情を反映していない」と、理事の定年制などに例外を求める声が出ている。
 高いハードルを設けなければならない事態は、不祥事続きのスポーツ界が自ら招いたのだ。NFの言い訳を許さぬためにも、統括団体は自らが同コードを厳格に運用し、模範を示す必要がある。不始末を自浄できない組織が、社会の理解を得られるはずがない。


競技団体理事の任期は「原則10年以内」 スポーツ庁

2019.6.10 22:38 産経新聞
 
 スポーツ庁は10日、日本オリンピック委員会(JOC)などに加盟する中央競技団体(NF)の新たな運営指針「ガバナンス(組織統治)コード」を決定した。
理事の多選制限などを盛り込み、2020年度から運用を開始する。諮問機関のスポーツ審議会から答申を受けたスポーツ庁鈴木大地長官は「スポーツ界が新たなステージに踏み出せるように、前向きな改革につなげたい」と意欲を示した。

 各競技団体の組織の新陳代謝を促し、不祥事の防止につなげる観点から、理事の在任期間を「原則10年以内」と明記。ただ、20年東京五輪パラリンピックや22年北京冬季五輪前の混乱を避けたいNF側に配慮し、23年度までは適用を猶予する。 

 理事が国際競技団体の役職に就くなど特別な事情があれば、最大4年の任期延長が可能な例外措置も設けた。外部理事の割合は25%以上、女性理事は40%以上を数値目標とした。超党派のスポーツ議員連盟が18年末、ガバナンスコードの策定をスポーツ庁に提言。理事の在任期間や構成は諸外国の指針も参考に、専門部会で議論を進めた。

 今後の運用はJOC、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)、日本スポーツ協会(JSPO)の統括3団体が4年ごとに傘下の競技団体を審査。スポーツ庁などと統括3団体でつくる「円卓会議」が審査内容をチェックし、コードに反する事案があれば、統括団体を通じて改善を求める。

スポーツ庁、ガバナンス・コードを公表=競技団体の理事任期など制限

2019年06月10日19時48分
jiji com 

 スポーツ庁は10日、中央競技団体が順守すべき規範ガバナンス・コードを公表した。各団体の理事について就任時の年齢を制限し、在任期間が10年を超えないよう再任回数の上限設定を求めるなど、運営の健全化を図る。統括団体の日本スポーツ協会、日本オリンピック委員会(JOC)、日本障がい者スポーツ協会は、2020年度からコードを基にした加盟団体の適合審査を行う。

スポーツ庁鈴木大地長官は、10日に諮問機関のスポーツ審議会から答申を受けて決定。「スポーツ界が積み上げてきた形と世間一般が求めるものに差異はあったが、納得するものになった。スポーツ界の健全な形を求めていく」と述べた。 
 コードはスポーツ界で相次いだ不祥事を受け、昨年末から策定が進められていた。大きく分けて13の原則で構成され、女性や競技出身者ではない外部からの積極的な理事起用、違反行為に対する通報制度の構築なども求める内容になった。

◇ガバナンス・コードの骨子
 一、組織運営に関する中長期的な基本計画を策定し公表する
 一、理事の就任時の年齢に制限を設ける
 一、原則として理事が10年を超えて在任することがないよう再任回数の上限を設ける
 一、理事のうち外部出身者は25%以上、女性は40%以上の目標を設定し、達成に向けた具体的方策を講じる
 一、財務情報、選手選考基準などについて適切な情報開示を行う
 一、違反行為に関する通報制度を構築する
 一、スポーツ仲裁機構の仲裁を利用できるよう周知する
 一、不祥事が発生した場合は調査体制を速やかに構築する